【感想】『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治|認知の歪みに理解のある人間になりたい

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『ケーキの切れない非行少年たち』

皆さんは発達障害・知的障害の人と関わったことはありますか?

彼らには世界がどのように世界が見えていて、なぜ非行に走ってしまう傾向にあるのか、考えたことがありますか?

私はあまり深く考えたことはありませんでした。私が興味ある教育分野とも関わりがあるはずだと思い、ある本を手に取りました。

そこで今回ご紹介するのは宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』です。

 

〜要点〜

この本は医療少年院で働いていた経験のある筆者が認知機能という観点から犯罪を行ってしまう少年を分析していく本です。

認知の歪みは、勉強を苦手にさせてしまったり、対人関係に失敗してしまう事があります。それが非行の原因になりますが、認知の歪みが内省もできない状態にさせていることを理解しなければなりません。

非行少年に共通する特徴はいくつかあります。「認知機能が弱い、感情統制が弱い、融通が効かない、自己評価が不適切、対人スキルが乏しい」、それに加えて不器用であることがあります。

実は小学2年生ごろから、子供たちは勉強や生活態度からサインを出しています。そこで大人に気づかれていない状態になっているのが問題の一つです。

解決法として褒めたり、話を聞いてあげたりするのは根本的解決になりません。学校は社会化するための場所であるはずなのに、その支援が少ないのも問題です。子供が知的に問題がないと診断されれば、それは性格上の問題とされてしまい、怠惰などの観点に変わってしまうこともあります。

改善のためには、学習の土台となる基礎的な認知能力をトレーニングする必要性があります。自己への気づきと自己評価の向上が重要なポイントです。トレーニングの詳細はぜひ本で読んでください。脳機能と犯罪は関係があるのであれば、脳機能の発達によって防ぐことができるはずです。

ちなみに刑務所では一人当たり年間300万円かかります。通常年間100万円納税する人が多いと考えると、一人の犯罪を防ぐことで年間400万円の経済効果もあります。

 

〜感想〜

認知能力の低い人は自分の周りにも確かにいて、空気が読めなかったり、心ない言葉を発したりします。でも勉強はできたりするので、この本で扱われている人とは違うのかなとも思ったり。

 

自分は誰かと話すときに、ある程度察してもらうことを前提に話してしまったり、婉曲的な表現をしてしまう事があります。それは日本の美徳みたいなところがありますし。でもそういう日本社会だからこそ、彼らはより生きにくく感じてしまうのかなとも思いました。この辺の研究があるのか気になります。

 

最近人との対話の難しさを痛感します。自分の言っている事を全て理解してもらえず、適当に流されることもありますし、逆に相手の言いたいことを汲み取り切れていない時もあります。自分自身、人によって話し方や使う語彙を変えることがあるのですが、自分はもっとそこに尽力するべきと最近感じています。

 

障害だと診断されていない人でも気付かれていないだけのこともあります。以前はIQ85以下だったのに現在はIQ70未満で知的障害と診断されます。これで人数が少なくなったというのは本質的には何も変わっていないという筆者の主張には同意します。また、それと同時に境界知能の人をどう扱っていくかは教育現場の難しい部分かなと思います。学校が勉強をするためだけの場所ではないのが今になってよくわかります。知的障害だと診断されていないのであれば、そのように扱うべきではないのかもしれません。教育現場では異なるのかもしれませんが、自己責任論に転じてしまう社会、そしてこれまでの自分についても顧みる必要がありそうです。まずは努力でどうにもできない部分に気づいてあげられようになりたいです。でもすぐに障害と結び付けてしまう思考はそれも問題なので、ここも慎重に考えないといけませんね。結局すぐに努力でどうにかなる部分と、改善に時間と労力がかかる部分が非常にわかりにくいのが難しい部分ですね。あー、難しい。

 

認知機能が低いと、作品と現実の区別ができないこともあるようです。最近アートの規制がよく話題になっていますよね。鬼滅の刃の吉原とか。私は規制することには反対で、明らかに悪意のある目的でない限り、表現は自由であるべきだと感じています。しかし、そこで全て親の教育に一任するのも難しい問題だとこの本を読んで思いました。子供が勘違いしてしまうのと、認知が歪んでしまっていることは異なるのだと読んで感じました。伝えて理解されるか、理解されないかは大きな問題です。

 

そして最後に経済効果の話をしているところで、自分には関係ないと思う人にも効果的な語り方をされていたなぁと感じました。

まとめ

いかがだったでしょうか。

もしかしたら、自分の知らない世界の話だったかもしれません。

まずは知るところから始まり、自分はどのように接する事ができるか、社会に対してどのような働きかけができるか、考えていきましょう。

 

ぜひ興味が出たら手に取ってみてください!