【感想】『いけばなー知性で愛でる日本の美』笹岡隆甫|いけばなから日本文化を知るのにおすすめ

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皆さん、日本の文化についてちゃんと理解していますか?

私は海外で生活したことがあるのですが、その時にかなり日本のことを質問されました。頑張って答えはするものの、あまり自信がないこともしばしば。

そこで今回は日本の文化についての知見を深めていこう!という内容です。

をご紹介し、自分の感想なども記していきたいと思います。

この本を手に取ったきっかけ

私は1月から読書を始めたのですが、始めるに当たって周囲の読書好きの人間にオススメの本を聞き回っていました。そこで高校の先輩が本を五冊貸して下さり、そのうちの一冊がこの本でした。

正直自分では絶対に手に取らないジャンルの本だったので、人に聞いてみるのは大成功でした。ぜひ皆さんも読むジャンルが偏りそうだったら人におすすめされた本を手に取ってみてください。新しい世界が開けます。

この本の要点

この本のスタンスはいけばなを知ることは「日本がわかる」です。そのため、いけばなの型の紹介などもありますが、いけばなの思想がどのように日本の文化と関わりを持っているかに注目すると、いけばなに触れたことがない人でも楽しく読むことができると思います。筆者は建築についても研究されていたようで、その視点でも語られます。

 

第一章ではいけばなの簡単な紹介がされています。いけばなは室町時代に生まれ、そこから江戸、明治、昭和でそれぞれの型ができました。また、流派も約340と多かったり、免許制度があって師範代になるまでには結構お金がかかったりします。フラワーアレンジメントと似ていると考えられていますが、こちらは左右対称の均整の取れたデザインなのでいけばなとは異なります。

 

第二章では思想について書かれています。いけばなは儒教思想、陰陽思想との繋がりが深いです。陰陽は互いに対立しながら依存するもので、優劣はありません。左が陽、右が陰と考えられていて、雛人形、アルミサッシなどもこの考えが適用されています。

 

第三章ではいけばなのデザインについてです。「たて花」「立花」「生花」「盛花」「自由花」それぞれの変化の仕方やデザインの特徴が説明されました。またここでは日本の美学についても触れられていました。「くずしの美」「余白の美」「時の移ろい」「正面性」などいけばなをモデルに日本全体に通ずる美について理解できます。

 

第四章では具体的な花の例、そしていけばなのタブーについても扱われました。かつては決まりが多かったものの、現在では薄れてきていて、相手の立場を考えることが大事になってきています。

 

最後の章では伝統をどのように継いで、変化させていくかというトピックでした。次世代の教育者が育っていないのが問題点のようです。後継者がいないのは伝統文化・芸能に多い問題ですね。そこで伝統に固執しすぎずに、時代に合わせて変化していくことを目指す筆者の姿勢が感じられます。

感想

日本文化、日本の美学について全く芸術に詳しくない私が理解できるくらいには読みやすかったです。

 

一番勉強になったことをあげるとすれば儒教思想や陰陽思想が深く日本文化に根付いているということです。例えば、いけばなでも建築でも、三つのレイヤーに別れているものを「天地人」に見立てられていたり、右と左、色などがそれぞれ意味を持っていたり。私が無教養ということもあり、そこまで考えられていたとは知りませんでした。

 

私は日本文化の中でも「くずしの美」が結構好きです。やり残しがある方が趣があるという考え方って素敵だなと。日光東照宮の柱やわび茶の茶碗などのことです。もちろん、仕事が粗雑な訳ではなく、計算された美学だとは思います。これを美しいと思うのが、日本特有なんでしょうね。この美学を知ると日本式のデザインを見るときに楽しくなります!

 

最後にいけばなのタブーについて書かれていました。これらのタブーって、これをしないととても綺麗にまとまるよね、ってことのようです。例えば、鑑賞者に向かって枝が突きでないようにとか、花が正面を向いていない方が良いとか。つまり美学に反しているものや、相手の立場を考えてのタブーってことですね。

私は日本の意味のないマナーが目についてしまい、しょうもないと思ってしまうことがあります。しかし、美しいかどうか、相手の立場に立てているかどうか、などを考えて自分が納得したらビジネスマナーも良いものになるのだなぁと勝手に思っています。なのですぐに文句は言わずにこの観点から一つ一つマナーを考えていこうと思います。

 

こういった本を読むと日本文化が詰まった京都にいきたくなります。近々訪れたい、、、

まとめ

笹岡隆甫著『いけばなー知性で愛でる日本の美』、気になってきましたか?

 

この本から日本文化のエッセンスを汲み取ることができましたし、同時に自分が体験することの解像度が一つ上がったような気がします。

これで建築やいけばなを見る時には新たな観点を持って楽しむことができます!