【感想】『教育格差』松岡亮二|まず格差を認識するところから始まる

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一月から読書をはじめたので、読んだ感想などを書き綴ろうかなと思います。

 

今回読んだ本は松岡亮二著『教育格差』です。

 

皆さんは教育について興味ありますか?

それぞれどんな形であれ教育を受けてきたと思います。

自分の受けてきた教育はどうでしたか?自分の進路は満足のいくものでしたか?

自分の幼稚園・保育園時代から現在まで思い出してみてください。

周りの人間はどんな人間だったか、自分の居心地は良かったか、そんな観点から読んでみても良いかもしてません。

『教育格差』を手に取ったきっかけ

私は高校教育に不満がありました。もう既に理解している範囲を強制的に聞かせ、生徒の時間を奪っているなぁと考えていました。そこでなんのための授業なのかを先生に聞いてみたり、自分なりに考えたりする日々を過ごしていました。

多くの大学生からしたら教育は過去のもので、もう自分とは無関係だと考えるのかもしれません。しかし高校を卒業して数年経った今でも私はやはり教育について考えます。

ある日NewsPicksのWEEKLY OCHIAIで教育のテーマを扱うと知り、観てみました。そこのパネラーの一人がこの本の著者である松岡亮二さんでした。教育格差というテーマは非常に興味がそそられたので実際に本を読んでみようと思いました。

『教育格差』要点

この本の一番大きなポイントは「社会階層や出身地域が進路に影響を与えている」です。

社会階層がどのように影響を与えるかというと、子供に習い事などを経験させることができ、子供の認知・非認知能力が向上します。さらに親が大卒であれば意図的な養育を行うようになる傾向があります。

出身地域の観点では、大卒の大人が周囲にいて、大学に行くのが当たり前の環境で育ち、さらに教育サービスを受けやすい地域にいると大学に行く傾向が強くなります。

研究によれば、幼児教育からすでに格差があることもわかっています。

最後に提言も行われ、現状把握のためのデータ収集を行うことが重要だと述べています。

この本は全体を通じてデータ分析を基に書かれているので、説得力はあります。抽象的で、主観で進んでいくような本ではないので現状把握ができて勉強になりました。教育に興味のある人にオススメの一冊です!

『教育格差』を読んで考えたこと

自分自身の高校・大学生活を振り返ってみると、自分はある程度無理をして大学に入ったのかなと感じています。大学には多様な人間が集まってくるというのは前提ですが、やはり周囲の人間を観察すると、自分と合わない人間が多いような気がしました。逆に言うと高校の友達との居心地が良すぎると感じました。高校時代の友達は出身地域は同じなのはそうですが、出身階層も大きく離れていなかったのかもしれません。

 

アメリカでは見た目で人種の偏りが可視化されるという点で社会問題として取り上げられるけれど、日本では分かりにくいため、能力や努力による選抜に見えるという話がありました。これはユニクロを着ていると普通に見えるから貧困層が日本にはいないと思ってしまうのと同じ現象なのかなと。そしてこの話は世に蔓延る自己責任論の根底にある部分なのかなとも思います。苦しい環境から這い上がってきた少数の人は勇気づける人としては非常に良いけれど、その人がいるから成功していない人は努力が足りていないという思考になると、環境要因を無視することになり、風当たりの強い世の中になるなぁと思っています。 この本から努力だけでなく環境要因にも目を向けるというヒントも一つ得ました。

 

ここ数年でオンライン教育が流行してきて、コロナ禍でさらに加速したイメージがあります。オンラインである程度の教育は受けられるようになったため、学校不要をうたう人も出てきました。確かに同年代の友達しかできにくいのは問題ですが、社会化の機能としては良いのではないかなとも思います。そしてそもそもオンラインにアクセスしようと思う人はやはりやる気のある人だけなのかなとも思います。既にそこには格差があるとも取れます。

 

しかし私はエリートを育成することを否定したくはないです。男女格差の文脈でよく語られるのが、日本の格差は大きく、途上国よりもひどい、ということです。もちろん格差は是正していくべきですが、男女どちらも大学に行けない人が大多数の社会では不平等になりにくいこともあります。教育でも格差の是正はこの文脈で語られてほしくありません。私は上を下げるべきではないと考えます。裕福な家庭の子供が優秀になり、将来日本を引っ張っていく人間となっても良いのではないでしょうか。ただ裕福な人のみ成功できることに問題があるのかなと。なので結局はボトムアップがポイントなのでしょうかね。ここのバランスは非常に難しい課題のように思えます。この本に書いてあった通り、階層化が進んでしまうことを容認した上でこの考えを持つことが重要なのかもしれません。

 

自分たちは何ができるか、個人の行動についてはこの本には書かれていませんでした。それでもまずは現状を知ることがまずは大事なのだと感じました。

 

まとめ

以上一本目の読書感想記事でした。

やっぱり要点を簡単にまとめ、自分なりの知見を書いていくのは結構難しいし時間はかかりますね。

それでも記憶としてちゃんと定着するし、その時の思考を言語化して記録に残せるので非常に有益ですね!

またこれからも少しずつ書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします!